2016/09/27

Web業界ではなくSIerのシステムエンジニアとして働く5つのメリット

SIerからWeb業界に転職した系ブロガーや過激派Webメディアは、一言目には「Web系はいいぞー」、そして二言目には「SIerはダメだ」とディスる。

SIerに親でも殺されたのかってくらい、やれ技術力がないだの、意識低い系社会人の群れだの、将来仕事がなくなるだの、方眼Excel爆発しろだの、社会のガンだの、人月商売のヤxザだの、滅すべきブラック企業だの、言いたい放題だ。

新卒でSIerに入社して数年働いた私としては、そういった過激で攻撃的な内容に疑問を抱くと同時に、腹立たしく思う。
ビッグライトを当てたがごとく主語をでかくして「SIerガー」と叫んでいるのではないだろうか?それともSIerを叩けばアクセス数が稼げるという、安易な考えからなのだろうか?

とにかく、SIerからWeb業界に転職し1年経った私の立場から、Web業界とSIerを比較して「SIerのシステムエンジニアとして働くメリット」について語ろうと思う。

SIerとWeb業界の基準について


「SIer」と「Web業界」は、私が所属したことのある下記の会社を基準にしている。
  • 新卒で入社したSIer: 資本金9,000万円、社員数170人、創立35年以上
  • 中途で入社したWeb系: 資本金89,000万円、社員数340人、東証一部上場

また、この記事でいう「Web業界」とは、Webサービスを自社開発している会社を指す。



メリットその1: 社会のしくみがわかる


SIerは雑食なところが多い。金融や財務会計、物流、医療、製造など、いろんな仕事がある。毒まんじゅう案件だって、とりあえず口にする。お腹下すけど。

SIerにいた数年で、財務会計→製造→流通→会計→人事→金融→物流と、いくつものプロジェクトを渡り歩いてきた。おかげで原価計算・生産管理の方法や帳簿・財務諸表の読み方、金融商品の知識、納品書の読み方など、学ぶことができた。

多種多様な業界で仕事ができるので、社会がどのようなしくみで回っているのか理解することができる。


では、Web業界はどうだろう?
自社サービスを開発する上での知識は得られるが、会計サービスを開発している会社では、倉庫管理についてはわからないだろう。生産管理サービスを開発している会社では、財務諸表の読み方はわからないだろう。とにかく、他業種については、まったく触れる機会がない。

多くの業界知識を得られることが、1つのメリットだ。



メリットその2: 多くの人に出会える


複数のプロジェクトを渡り歩いたり、大炎上プロジェクトで100〜200人と仕事をしたり、人に出会う機会が多い。(ほとんどが男性なので、職場で婚活できないけど…)
多くの人に出会うことは、多くの価値観に触れ自分を見つめ直すチャンスがあるということだ。

中には、どうしたらそんな性格になったの?とか、その歳になってなぜ入門レベルのコードしか書けないの?とか言う人もいる。だから、反面教師には事欠かない。
「人のふり見て我がふり直せ」のごとく、どうしたら信頼を失うのか、嫌われるのかを知り、自分の考え方(性格)を変えることができた。

もちろん100人いれば3人くらい優秀で尊敬できる人もいる
チームを引っ張ってくれるリーダ、メンバーの士気を高めてくれるマネージャ、いつも相談にのってくれる先輩。「あんな人になりたい」と思える人にも出会えた。
数撃ちゃ当たる戦法だけど。


では、Web業界はどうだろうか?
少数精鋭のチームなので、1年たっても会社の中に20人くらいしか知り合いができなかった。
あと、みんな総じてスキルが高い。質問すればすぐ返ってくるし、どんどん開発を進めてしまう。

反面教師がいるからこそ、自分の欠点に気づけるのに、まったくもって人材が不足している。



メリットその3: 給料がいい


SIerといっても上流にいる会社は、給料が良い。私の場合は、社会人3年目で年収500万円を超えたこともある。
なので大手SIerのマネージャクラスなら800万とか行くんじゃないだろうか?
(前職のお世話になった執行役員は、40代で800万以上もらっていたらしい)

ただ、お金と健康・プライベートを天秤にかけなければならないが。


では、Web業界はどうだろうか?
転職先はほとんど残業がない。1年間の総残業時間が、前職の1ヶ月分未満だったりする。なので、年収的にはほんのすこし下がった。
ただ、基本給は数万アップ、ボーナスは3倍になったので、トントンというところだろうか。



メリットその4: 強い向上心が必要なく休日に遊べる


SIerは、本当の意味での上級職(名ばかり管理職ではなく)を目指さないかぎり、強い向上心はなくても大丈夫だ。
なぜなら、人海戦術でも対応できるように、どんなスキルレベルの人でもできる程度に作業が細分化され管理されているからだ。

だから勉強はしなくても良いし、休日も遊べる(休日があるかどうかは不明だが)


では、Web業界はどうだろうか?
みんな必死に働いた上で、休日には勉強会だのハッカソンだのに参加している。そしてもっぱらの趣味がGitHubの緑化作業だったりする。そりゃもう遊ぶ暇なんてないくらいに。



メリットその5: 豊富な人生経験が得られる


これまで書いたように、いろいろな経験ができるのがSIerだ。
そして、私が前職で学んだことは、以下の6つだ。

  • 他人に期待してはいけない
  • 改善しようとする力は弱く、ときに攻撃されることがある
  • 本当にツライときは、敵より味方に注意すること
  • 余裕がなくなると負のオーラを漂いはじめ、人が離れていく
  • 負のオーラをまとっても助けてくれる人は、一生大切にしなければならない人
  • ツライときほど笑顔を忘れてはいけない

ツライ経験があったからこそ、今の自分がある。
心の底から憎み、キライになった人がいるからこそ、たいていの人を許せるようになった。
うつ状態と診断されながらも働かされたことで、お金より健康が大切だと実感した。


では、Web業界はどうだろうか?
おそらくこんな経験はできないだろう。
20代前半の貴重な時間と健康体(視力やキレイな内蔵)を犠牲にしたからこそ、これからの60数年の人生を幸せに暮らせる気がする。



SIerは、SIerで、いいところもある


つらつらと述べてきたが、いかがだっただろうか?
SIerのシステムエンジニアとして働くメリットは、伝わっただろうか?

SIerだからこそ得られたこと、学べたこともたくさんある。
いろんなタイプの人間に出会えたことで、人生が大きく変わった。
支えてくれる人たちがいることにも気づけた。


SIerは、SIerで、いいところもある。


これが伝われば幸いだ。






でも私は、、、


もう二度とSIerで働きたくない!!




以上

written by @bc_rikko

4 件のコメント :

  1. 価格コムって良い会社ですか?

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    1. 「良い会社」というのが働く側から見たものか、サービスを利用する側から見たものか、はたまた投資する側から見たものかで定義が変わってしまうので、なんとも言えません。

      ですが、転職エージェントで紹介いただいた求人票を見る限りでは、なかなか良い条件が提示されていました。
      ただ価格.comはC#/ASP.NET/IIS/SQL ServerとずいぶんMS寄りな開発をしており、エントリーまでには至りませんでしたが、MSラブな方には良い職場だと思います。
      食べログなど他サービスについては、Ruby/Railsが使われているみたいですね。

      これで答えになりましたでしょうか?

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  2. いつも記事を楽しく読ませていただいてます。
    私もSIerからの転職組ですが、Web系ではなくユーザ企業のIT部門に転職しました。

    Web系というのは最先端の技術を駆使して勉強会やらなんやら学生の文化祭に似た雰囲気がありそうなイメージですね。
    私も縁があればWeb系企業に転職していた可能性もあり、同じSIerからの転職組としてWeb系のRikkoさんが転職先の企業で感じることなど気になります。

    お話しを聞くだけだと悪いので私のほうのユーザ企業のIT企業(いわゆる発注側というやつ)へ転職して感じていることを簡潔に書きます。
    私は売り上げが数千億円規模の日系ユーザ企業に転職しました。
    この世界ではもうITの技術部分はほとんどやりません。総務とか経理とかのような間接部門の一つなので技術よりも社内政治の世界です。
    ある程度は予想はしていたのですが、下手に技術があることをアピールしてしまうと色々と苦労が多くつらいと感じることが多いです。技術的な経験やプロジェクト管理の経験を面接でアピールして転職したのですが、入社後はその能力を100%発揮させてくれない辛さがあります。政治の世界なので、上長は成果が上がりそうな仕事はあらかじめ実績を積んでほしい人に任せようとします。社員間でかなりの能力差があるにも関わらず、政治的な仕事の割り振りのせいでできるものもできずしょぼい結果になることが多くモチベーションがmaxになりづらい辛さがあります。

    だからと言ってSIerに残るべきだったかと思えば全くそうは思いません。
    SIerというのは元請上流だろうが下請けなので、先がありませんからね。今年は外資系ITベンダー大リストラの年ですが、私も転職していなかったら会社分割やリストラの波に確実に巻き込まれていました。

    Web系の企業に対するイメージですが、転職していったん落ち着いたとしても常に次を考えていなければならない気がしますが、いかがでしょうか。
    私の知人で
    新卒企業(割とまったり)→外資系ITコンサル(激務)→Web系ベンチャー(?)
    の転職歴を持つ方がいますが、キャリアのギャップがすごいなと驚いています。

    Rikkoさんのブログを読みますと、SIer時代よりも働き方は落ち着いているように伺えますね。
    実際のところ大手のWeb系の会社であればスタートアップのベンチャーの働き方、稼ぎ方のイメージは異なるものなのでしょうか。

    またRikkoさんにユーザ系の企業への転職志望はあったのか聞きたいです。
    よろしくお願いします。

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    1. コメントありがとうございます!
      またユーザ企業についてもお書きいただき、ありがとうございました。

      ユーザ企業のIT部門というと、社内SE的な立ち位置でしょうか?
      社内SEだと、SIerとユーザの板挟みになって大変そうなイメージがあります。
      たしかに「できるところ」を見せると、雑務が降ってくると聞いたことがあります。こわい…。
      ----
      では、転職について。
      まず、SIerを辞めた理由は「未来」が描けなかったからです。
      詳しくは→ http://kuroeveryday.blogspot.jp/2015/04/leave.html

      そして、転職はWeb系一本に絞って行いました。
      Web系の中でも、WebサイトではなくWebサービスを作っている会社。そしてフロントエンドエンジニアとして雇ってくれる会社を探していました。
      ですので、ユーザ系やスタートアップなどは候補にあがりませんでした。

      なぜWeb系かというと、単純に「楽しそう」だったからですw
      はてブやTwitterを見ていると、SI系の人たちは「ツラい」「帰りたい」と言っているのに対し、Web系の人たちは「お寿司食べたい」としか言っていませんでした。
      仕事のことより今晩の食事のことが気になるということは、それだけ充実した生活が送れているということなので、羨ましいなと思い、半年間無職になりイチからWebについて勉強し転職しました。

      転職した会社は、老舗サーバ屋さんです。
      そこでは、残業は多くても月10時間未満(前職なら変な勤怠計算のせいで2時間未満になりそう)、賞与も4ヶ月分。
      「働きやすい環境」が勝手に整えられていくような会社です。

      キャリアパスについては、自主性が重んじられるので「これやりたい」と言えば大体やらせてくれます。社内公募制度もあり、フロントエンドからサーバサイド、またはハードウェア系などの様々な業務に就くことも可能です。
      しかし、何も声を上げないと、一生同じモノを作り続けるだけの退屈な仕事になりそうです。
      SIerだと期間がすぎれば別の仕事をさせられるのですが、自社サービスを作っているとそもそも期間がないので同じ仕事を続けることになります。


      このような回答でよろしいでしょうか?
      また何がありましたら、コメントやTwitterなどで質問していただけると幸いです。

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